DMedical契約トレーナー:井澤秀典さんが、スポーツメディカルを中心にトレーナー活動の中で経験してきたことや日頃感じていることなどを綴っていきます。
スポーツの現場に携わる方やスポーツを楽しむ方々に参考にしていただける内容を毎月お届けいたします。

テーマ 『合宿や遠征時の準備』

読者の皆さんの中には、この夏に合宿や遠征に行かれる方も多いのではないでしょうか?
今回は、合宿や遠征時の準備についてお話したいと思います。

◆選手・スタッフの状況を知っておく

合宿や遠征に参加するメンバー(選手、スタッフ)全員のアレルギーや持病、薬の常用など、健康状態を事前に聞いておく必要があります。集めた情報はAMPシートを個人個人で作成しておくと便利です。何か起きた際には、医療機関にそのまま情報を共有することもできます。
AMPシートとは、以下の3つの情報をまとめたものです。

 A:Allergy(アレルギー)
 M:Medications(内服薬など)
 P:Past medical history(既往歴)

特にアレルギーについては、合宿・遠征先の食事の配慮が必要になる場合があるので、事前に把握しておくことが重要です。 また、トレーナーとしてはどうしても選手を中心に考えますが、スタッフのこれらの情報を知っておくことも非常に重要です。


◆合宿・遠征先の情報収集

現地の医療機関の情報や医療機関までの経路や移動手段など、事前にシミュレーションしておくと何かあったときに焦らずに行動できます。また、事前に現地のスタッフ(宿泊先のスタッフなど)とコンタクトを取って情報収集しておくことも必要かもしれません。

数年前に沖縄に合宿に行った時のことです、リカバリーの一環で選手が海に入ることがありました。選手の一人が直後から足に激痛を訴えました、足はみるみる腫れ上がり、おびただしい数の水泡が足部にできていました。
一般的に考えて、このような場合多くの方は「冷却」するという選択をすると思います。私も例に漏れず、「とにかくアイシング!!」と腫れ上がった足にアイスパックを巻きました。
ところがです・・・腫れが引くどころか、どんどん痛みが増し、その選手は耐え切れずアイシングを止めました。そうこうしていると、チームドクターが地元のドクターから有益な情報をゲットしてくれました。それは「温める」という処置でした。バスタブにお湯を張り、足湯のような形で足を温めると・・・なんとなんと痛みは軽くなり、どんどん症状は軽快していきました。

この選手は、毒をもった海の生物に足を刺されてこの様な状況になったわけですが、(なんという名前か忘れてしまいました・・・)症状を説明しただけで適切な対応方法をアドバイス頂いた地元のドクターの先生には感謝感謝でした。これは、毒の主成分はたんぱく質毒素なので、熱に弱く、温めると刺胞が不活性化し、痛みが軽減されるということが背景にあるのだと後から知りました。

「ローカルの事は、ローカルに聞け!」この時に学んだことです。
 


また、コンディショニングのために、現地の気候についても事前に情報収集しておくことも必要です。寒かったり、暑かったり、事前にわかっていれば衣類などの準備もぬかりなくできます。また、海外の場合には、時差や飲料水の情報なども必要になってきます。
いつもと違う環境に行くわけですから、とにかく様々な想定の中で不安要素を少しでも減らすということがキーポイントになるかと思います。

「備えあれば、憂いなし」
良い準備をして良い合宿・遠征にしましょう!!
 

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