前回はテーピングについてのお話をさせていただきました。今回はその続きで、「キネシオロジーテープ」についてです。

キネシオロジーテープは、はく離紙のついたアクリル系粘着剤を用いた伸縮性のある薄手の綿やアクリルのテープで、運動による外傷障害予防や疼痛を軽減する目的で直接肌に貼るテープです。
キネシオロジーとは、人間またはそれ以外の生物の身体の運動の科学的研究のことで、キネシオロジーテープの「キネシオロジーは、どうやらカイロプラクティックまたは代替療法からできた「アプライドキネシオロジー」から生まれた言葉のようです。

キネシオロジーテープを用いたテーピング方法は、日本人の加瀬建造さんによって、1970年から80年代に皮膚と筋の伸張反射を利用した伸縮性テープによるテーピング法として開発されたもので、キネシオテープ®として皆さんもご存知かと思います。
現在では日本のみならず、諸外国でも多くのアスリートが使用しています。
多くのスポーツテープは,アライメント不良に対する矯正や損傷部の安静を目的とした固定のために使用されています。それに対し、キネシオロジーテープの目的は、皮膚に違和感なく貼りつき、筋膜と筋の間にわずかな隙間を作ることで皮下の還流を良好にして自然治癒力を高めることとされています。
私も学生時代に、「脚が攣らないテープ」としてふくらはぎに貼っていた記憶があります。確かに攣らなかったような…
 


キネシオロジーテープについては、様々な意見があるのも事実で、様々な研究がされています。
慢性的な筋骨格痛がある人の場合キネシオロジーテープは痛みの緩和に役立つが、他の治療法に優るものではないことが示されおり、慢性痛の身体障害を軽減するというエビデンスはないとされています。また、運動パフォーマンス(運動時の筋力低下)に対する研究でもその効果は無いとされています。

しかしながら、スポーツ現場では多くのトレーナーやアスリートたちがキネシオロジーテープを使用しています。なぜなのでしょうか?
次回は、この「なぜ?」について考えてみたいと思います。


【参考文献】
吉田一也:キネシオテーピング ® の理論と基本的貼付法.理学療法学.2012;27:239-245.
“Kinesio taping in musculoskeletal pain and disability that lasts for more than 4 weeks: is it time to peel off the tape and throw it out with the sweat? A systematic review with meta-analysis focused on pain and also methods of tape application”. British Journal of Sports Medicine. (2015).
キネシオテーピングが疲労課題後の筋力低下に与える影響 ~テープ幅の違いに着目した検討~ 川口陽亮他.東北理学療法学 2019 Vol. 31 Pages 59-65
 



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