今回は前回の続きで、「キネシオロジーテープの効果」についてです。
スポーツ現場では多くのトレーナーやアスリートたちがキネシオロジーテープを使用しています。なぜなのでしょうか?

キネシオテーピング協会のホームページには以下のような記載があります。

〈キネシオテーピングの4つの効果〉
①筋肉の機能を正しくもどす
②血液・リンパ液の循環を良くする
③痛みを抑える
④関節のずれを正す


キネシオロジーテープの一番の特徴は、「皮膚に直接貼る」ことだと私は思っています。
人は身体のどこかを強く何かにぶつけた時などには、無意識のうちにその部位をおさえたり、さすったりします。それは、痛みが減ると人間の本能が知っているからで、キネシオロジーテープを貼ることは、皮膚をさすったり、おさえたりすることと同じような効果があるのではないかと個人的には考えます。
皮膚には、沢山の固有感覚受容器と呼ばれるセンサーがあり、感覚受容器で感知した刺激は感覚神経経由で脳の感覚中枢に伝わります。痛みの刺激は痛みを伝える神経を経由して脳に伝わりますが、そこに別の触覚の刺激が加わると、触覚を伝える神経が痛みの神経を抑制し、痛みが和らぐとされています(ゲートコントロール理論)。

最近では、人間が持つ「TRPV2」という熱を検知するセンサーが、物理的な刺激が加わった際に活性化し、神経突起を伸ばす働きがあることから、損傷部位を自然となでたりさすったりする行為には無意識に損傷部位の再生を促そうしている可能性がある、というような研究もあります。
もしかしたら、キネシオロジーテープを貼ることは、このような作用にも関係しているかもしれません。
 


先行研究では、テーピングが痛覚関連体性感覚誘発電位(痛みなどの刺激が脳で引き起こす反応)に及ぼす影響を調べ、テープ貼付による求心性入力(末梢神経から中枢神経への信号伝達)の増加とdistraction(注意をそらす)効果とにより痛みが抑制される可能性があること、さらに、張力を伴うテーピングを行った場合、張力により生じる求心性入力が付加され、より効果的に主観的な痛みを抑制する可能性が示唆された。とされています。

いずれにしても、いつもふくらはぎが攣る選手がキネシオロジーテープを貼ったら攣らなかった、という事実もあるわけです。
これがプラセボなのか、科学的根拠に基づくものなのか??
さらなる研究が必要なのかもしれません。


【参考文献】
Chang HY, Chou KY, Lin JJ, et al.: Immediate effect of forearm Kinesio taping on maximal grip strength and force sense in healthy collegiate athletes. Phys Ther Sport, 2010, 11(4): 122-127
TRPV2 activation by focal mechanical stimulation requires interaction with the actin cytoskeleton and enhances growth cone motility. Sugio S, Nagasawa M, Kojima I, Ishizaki Y, Shibasaki K
テーピングが痛覚関連体性感覚誘発電位に及ぼす影響 山代, 佐藤, 大西, 中澤, 下門, 山﨑, et al. 体力科学 2016 Vol. 65 Issue 4 Pages 393-40
 



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