Akihito Yamada × Takashi Kurihara Akihito Yamada × Takashi Kurihara トップアスリート対談

元ラグビー日本代表の山田章仁、
アメリカンフットボールXリーグ・イコールワン福岡SUNSの栗原嵩。
日本を代表するコンタクトスポーツのトップ選手が語る
テーピングの重要性、そして学生アスリートの新たな可能性とは?

  • 山田章仁Akihito Yamada

    山田章仁Akihito Yamada

    1985年福岡県出身。小倉高校から慶応義塾大学を経てホンダヒート、パナソニックワイルドナイツで活躍。
    ラグビーワールドカップ2015の日本代表に選出され、サモア戦で初トライ。
    2019年よりNTTコミュニケーションズシャイニングアークス所属。
    多彩なゲストを迎えて送るYouTube チャンネルは必見。

    山田章仁 YouTube Official
  • 栗原 崇Takashi Kurihara

    栗原 崇Takashi Kurihara

    1987年京都出身。駒場学園高校から法政大学を経てパナソニック インパルス、IBMビッグブルーで活躍。
    2013年にNFLボルチモア・レイブンスのルーキーキャンプに参加。
    2020年よりイコールワン福岡SUNS所属。
    並行してボブスレー日本代表でも活躍中。
    トレーニング情報満載のYou Tube チャンネルは要チェック。

    栗原崇/Takashi Kurihara Channel
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ケガ予防にテーピングは欠かせない

-まずはお二人の関係、そして今までどんな風にテーピングテープを使ってきたかを教えていただけますか。

山田:
栗とはもうだいぶ長いよね。
栗原:
かなり長いです。僕が24の時に同じジムでトレーニングしていた時からですよね。今年で10年目ですよ。章仁さんがツイストパーマをかけていたころ。当時から憧れでした。
山田:
そんな時代もあったね(笑)。
栗原:
日本のラグビー選手、アスリートの枠から外れた人だなぁと。ラグビー選手には珍しい、アメリカンな雰囲気を感じました。アメリカ人のアメフト選手はすごく自由で、章仁さんには彼らと似た雰囲気を感じていました。
山田:
あの髪型のせいで、実際はだいぶ苦労したけどね。それよりも、今回はテーピングの話だから(笑)!
栗原:
そうでした(笑)。ラグビーもアメフトもケガはつきもの。やはりテーピングは欠かせませんね。
山田:
今はそれほど多くは巻かないけれど、昔はかなり使っていたよ。
大学時代は「キネシオの山田」と呼ばれていたぐらい(笑)。
栗原:
それは正直、意外です。章仁さんには、たくさんテーピングをしているイメージがないので。
山田:
以前は自分でキネシオテープを買って、バッグに箱ごと入れて遠征していたこともあるよ。もちろんチームのものもあるけど、誰かがたくさん使ってなくなったら嫌だし、ホテルの部屋で自分で巻いて試合に行きたくて。
栗原:
思い返すと僕の場合、大学時代は足首のテーピングが必須でした。予防のためですね。
山田:
テーピングしないせいで、思い切りプレーできないようではダメだからね。
栗原:
それと、僕には指の脱臼グセがあるんです。アメフトの”レシーバーあるある”ですが、ボールを取り損ねて指を脱臼しないよう、指に必ず巻きます。あとは手首、足首。腰とハムストリングスにキネシオテープを巻きます。
ケガをした箇所には必須ですが、社会人になって予防で巻く量は減りましたね。学生時代は練習量が多いですが、身体ができていないので、予防のためしっかり巻いた方がいいと思いますね。ケガがクセになると厄介ですし。
山田:
巻くと安心感が生まれて、気持ちが強くなるよね。
栗原:
ラグビー選手はいろいろな箇所にテーピングしているイメージがある。でも章仁さんはそれほど巻いておらず、常にユニホーム姿がきれいですよね。
山田:
確かに最近、たくさん巻くことはなくなった。メリハリをつけて強くカットを踏むタイプではなく、柔らかく動くので、膝や足首をきつく固めるのが苦手なのもあるかな。
栗原:
僕も一緒です。あまり固めたくないですね。関節を使ってプレーしたいんですよ。
山田:
関節を使う!? 栗、さすがだね(笑)。
栗原:
聞いた話ですが、陸上選手は地面からの反発を足裏で受け止めて前へのスピードに換えるため、足首を固定するとスピードが出やすい。でも球技の選手はカットを踏むので、そうとも限らない。合う合わないがあるらしいです。
山田:
巻き方もあるよ。学生の選手に言いたいんだけど、例えば足首とか、できる箇所は自分で巻けた方が絶対いいと思う。テンションの好みがあるから、自分に合う固め具合を追い求めてほしい。
トレーナーさんに「もっと強く引っ張って下さい」なんて頼むより、自分がプレーしやすいテンションを探して、自分で巻くこと。それっぽく言えば、筋肉と対話しながらね。
栗原:
筋肉と対話! 章仁さんこそさすがです(笑)。
山田:
いやいや(笑)。最近のテープは色もたくさんあるよね。色がモチベーションアップにつながると思う。
栗原:
黒とか、ピンクもあります。いいですよね。
山田:
色つきはテンション上がるね。テーピングって今まで、ケガのネガティブなイメージがあった。でもそれだけじゃない。もちろん負傷の予防になるし、ファッションの一部としてもいい。さらにパフォーマンスを伸ばしてくれる。テープは本当にいろいろな種類があるから、カタログをじっくり見てほしいね。

セブンズの合宿に行ったら、
アメフトの40ヤード走でベストが出た(栗原)

ーお二人はそれぞれの競技のトップ選手でありつつ、山田選手はアメリカンフットボール(Xリーグ・ノジマ相模原ライズ)、栗原選手はラグビー(男子セブンズ日本代表候補合宿に参加)に挑戦した経験があります。当時のことを教えていただけますか。

栗原:
ラグビーとアメフト、似ているようで結構違いますよね。
山田:
だいぶ違う。ランニングバックで挑戦して、試合はキックのリターナーのみ出たんだけど、正直もうちょっとやれると思った。アメフトってボールを持っている選手にみんなで来る。
でもラグビーはスペースを守るので、そういうことはない。アメフトのプレッシャーはものすごかった。
栗がレシーバーやリターナーで活躍しているのは本当にすごいと思ったよ。
栗原:
視野も違いますよね。ギアには慣れましたか。
山田:
ぜんぜん(笑)。でもあのシーズン、秋にラグビーもアメフトもやったんだけど、2日連続で試合したこともあった。アメフトはギアが重い分、おもりを持ってトレーニングをしていたようなものだったから、ラグビーがすごく調子よかったんだよね。大リーガー養成ギブスが外れた星飛雄馬みたいなもので(笑)。
栗原:
ラグビーも違いましたね。特に僕がチャレンジしたセブンズは15人制とも違うのですが、身体に何も付けずにタックルに行くって信じられないです。
山田:
逆は行けるけどね。でも、栗はよくやっていたと思うよ。
栗原:
結構頑張りました。いい経験になりましたね。
山田:
アメフトとラグビーって、相手をかわす動きがちょっと違う。セブンズのみんなが「栗原さんは一瞬で消えます。今まであんなステップされたことないです」と言っていたよ。
栗原:
それ、言われましたね。
山田:
栗は普通にやっているだけだろうけど。
栗原:
圧倒的に違うのは、アメフトはスピードを落とさず方向転換をしなくてはいけないシチュエーションが多い。
特に僕はワイドレシーバーなので、走って止まって、90度や45度といった角度で入ったりを、基本的にすべて100%のスピードでやっている。その感覚でセブンズに入ったんですよ。スピードを上げたまま方向転換する動きが、ラグビー選手の人達からするとあまりないんでしょうね。
さっき章仁さんが言っていたように、ラグビーはスペースで守る。
アメフトは相手選手がどんどん突っ込んでくるので、減速動作が少しでも入ると後ろから追いつかれてしまうし、一人かわしてもあらゆる方向から相手が来てしまう。だから、なるべくスピードは落とさない。
山田:
その動きがちょっと違ったんだろうね。
栗原:
でも本当にハードでした。もう、ひたすら走るのできつかったですね。
めちゃくちゃハードで、スポーツで一番きついんじゃないか、と思いました。アメフトはあんなに走り回りませんし、しかも僕の場合、アメフトでタックルするシチュエーションはほぼない。死にそうになるぐらいきつかったです。
アメフトはラグビーに比べたら、試合後の全身の疲労感は少ないです。
山田:
僕の場合、キックのリターンしかやってないから。でもレシーバーって結構走るから、きついんじゃないの!?
栗原:
全力で走ったり止まったりがある分、レシーバーはきついかもしれません。
交代は自由にできますが、体力はあった方が絶対いいですね。でもさっき章仁さんが言ったみたいに、僕もセブンズをやっていた時はアメフトも調子がよかったです。
セブンズに挑戦したのが2015年で、僕は同じ年にNFLのベテランコンバインに招待されたんですよ。
その時に40ヤード走の自己ベストを出せました。
セブンズの合宿で、今までの自分にない身体の使い方をしたことが、アメフトでプラスになった気がします。

身体と話しながら、
トレーニングをしすぎないこと(山田)

ー現在、山田選手、栗原選手ともにベテランの年齢となりましたが、
フィジカルの変化などはありますか。

山田:
コンタクトの後は、やっぱり身体に疲れが残ります。
栗原:
残りますね。ただし僕の場合、パフォーマンスは自体は変わらないですし、まだ絶対に伸びると思っています。
結局、トレーニングってやった年数が大事だと思っているんです。真剣に取り組んだ年数が多ければ多いほど、能力は上がっていく。ただし30代になると、耐久性が落ちる。
その兼ね合いをミスするとケガにつながるので注意が必要です。それで僕は昨年、大きなケガをしてしまったんです。トレーニングを追い込みすぎて、やってしまいました。3カ月かかりましたね。
山田:
ちゃんと身体と話をしながら、トレーニングをしすぎないようにするのも大事だね。
僕は体を回旋させるトレーニングを入れたりとか、20代のころよりもバリエーションを増やしている。
重たい重量をあまり持たなくなったかな。栗は今もまだやっているよね。
栗原:
僕は重さ勝負です。
山田:
ラグビーはアメフトと比べると、マラソンっぽいところある。たぶんアメフトの方が、瞬間的に身体にかかる負荷は大きいと思う。
栗原:
その辺は、競技の違いも大きいですね。

自分の能力を、他競技でも生かしてみたい(栗原)

ー今後、お二人はどんなアスリートになっていきたいと考えていますか。

山田:
今までいなかったラグビー選手になりたいね。
栗原:
いや、すでになっていますよ(笑)。章仁さんのおかげで、自由で奔放なラグビー選手が増えた気がします。
山田:
もちろんルールはちゃんと守りつつ、思い思いのことをやっていけたらいいよね。
若い選手達が人生を楽しむ中で縛りがあるとしたら、それを僕らができるだけ取ってあげたい。
これしたらダメあれしたらダメ、という重荷を、一つ一つ外していけたらいいよね。
栗原:
さっきも言いましたが、僕は章仁さんに影響を受けていましたからね。ツイストパーマかっこいいなぁと。
あんなにすごい章仁さんがそういうことをやってもいいんだな、と。
山田:
まあ、その辺はいろいろあったけどね(笑)。
栗原:
本来、髪型はプレーと関係ないですからね。僕はラグビー界にいないから、わからない部分もあるけれども。
山田:
今思うと、あれは髪型に逃げていたところもあった。自分自身が成長できていなかったのを、髪型でごまかしていた。そもそも坊主だろうと短髪だろうと、当時の自分は代表に入れていなかったと思う。
あの後に実力としっかり向き合って、成長できたから。
栗原:
本なるほど。
山田:
さっき言った「今までいなかったラグビー選手」というのは、見た目だけの話じゃなくて、姿勢もある。
例えば、自分のプレーを積極的にアピールすること。
日本では何でも黙ってやることが美徳とされているけれど、それがマイナスになることもある。能力がある選手はどんどんアピールして活躍してほしいと思うし、それを伝えていきたい。
栗原:
今までいなかったアスリートになりたい、というのは僕も一緒です。
今、ボブスレーの日本代表で活動していて、22年に北京で行われる冬季オリンピックに向けた代表メンバーで合宿をしています。オリンピックに行けるかはまだわからなくて、代表がポイントを取って出場枠を得なくてはいけないのですが、絶対に出たいですね。
山田:
やってみて、どんな感じだった?
栗原:
冬のオリンピック種目の中では、究極のアスリートの集まりだと思います。
海外のメダリストレベルはとんでもないですよ。体重100㎏で100mを10秒台、クリーンを軽く150㎏、なんて選手もいますから。でも、ぜんぜん違う競技にチャレンジするという意味では最高です。
山田:
栗をお手本にして、学生アスリートはぜひ、いろいろなスポーツにチャレンジしてほしいね。
栗原:
例えばラグビー選手ですごく運動能力が高いけれども、ラグビー自体は上手くない、という子は絶対いると思うんです。どの競技でもそういう選手はいますが、その子達は日本のスポーツの中だと、一つの競技で終わってしまう。
山田:
最初決めたものをずっとやらねばならず縛られてしまうのは、もったいない。
栗原:
自分の能力をアメフトだけでなく、他競技でも生かしてみたいとずっと思っていたんです。
それでオリンピックに出れたら、いろいろなことが変わってきますよね。アメフト選手がボブスレーやるだけでなく、逆もあるかもしれないし。
山田:
学生にはぜひ、それを伝えたいね。まだ自分のポテンシャルがわからないだろうから、できるだけ多くの可能性にチャレンジすべき。。
栗原:
こういうことって、日本の学校のシステムだとなかなかできない。でもそんなことは、空気を読まず、コーチに「冬は違う種目をやりたいから練習を休みます」って言いに行けばいいだけだと思います。要は行動力。その結果、いろいろなスポーツをやれるようになったら面白い。そういったことも、僕が実際の行動で体現していきたいですね。

-自分の競技にとらわれず、アスリートとしてさまざまな競技にチャレンジしていく。その姿勢において、お二人はまさに先駆者。今後、日本の学生アスリートがもっと多彩なチャレンジを行っていけば、スポーツ界は大きく変わるはずです。

本日はありがとうございました。