世の中の科学技術の進歩は日進月歩。それはスポーツの世界でも同じこと——例えばサッカーのVAR、陸上競技の厚底シューズ、かつての高速水着などなど。しかし、変えてはいけないこと、変えない方が良いこともあるはずです。

先日、薬物使用(ドーピング)を解禁する新たなスポーツ大会「エンハンスト・ゲームズ(進化した大会)」を2026年5月に開催するという報道がありました。この大会は薬物や医療処置の利用を可とし、むしろその利用を推奨する——すなわちドーピングを前提とした大会で、高額な賞金が与えられるとのことです。

ドーピングとは「スポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為」のことです。禁止薬物を意図的に使用することだけでなく、意図的かどうかを問わずルールに反するさまざまな競技能力向上の“方法”や、それらの行為を隠すことも含めてドーピングと呼びます。

ドーピングは、自分自身の努力やチームメイトとの信頼、競い合う相手へのリスペクト、スポーツを応援する人々の期待を裏切る、不誠実で利己的な行為です。ドーピングが存在する限り、本来の意味でのスポーツは成り立ちません。
(公益財団法人日本アンチドーピング機構ホームページより)

一方、エンハンスト・ゲームズの主催者は次のように主張しています。
『“スポーツと科学の革命”“人体の潜在能力を解放する試み”などと喧伝し、医薬品の開発促進や健康長寿の推進につながり得る』として、さらに日本に向けては
「われわれの目的は人類の文化を根本的に変えることだ。高齢化が進む日本では、このままでは100年で日本人がいなくなるとすら言われている。そんな日本が力強さを取り戻すにはどうしたらいいか」。
「必要なのは技術の進歩だが、その中心にあるのは長生きや薬物だ。日本はほかのどの国よりもエンハンスト・ゲームズが必要だ。僕のもとには王族や大統領からもコンタクトがあったが、日本の指導者からはない」と話しています。
(産経新聞|記事リンク

世の中には多様な人がいて、さまざまな考え方があることは理解しています。リンク先のインタビューを読むと一見もっともらしい主張のようにも感じますが、「なにもスポーツを利用しなくてもいいのでは?」というのが率直な感想です。そして、仮にこの大会で“世界記録”が出たとして、それを「真の世界記録」と呼べるのでしょうか。

結局、最終的にひどい目に遭うのはアスリートなのではないか——私はそう思います。
読者の皆さんは、どう感じられるでしょうか。

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