
ラグビーやアメリカンフットボール等のコリジョンスポーツでは、脳振盪の発生頻度が高く、現場にいるアスレティックトレーナーとしては、その対策と受傷後の対応方法などを十分に身に着けておく必要があると感じます。
私も何人もの脳振盪の受傷の機会に居合わす機会がありましたが、全ての選手が同じ症状ということは一切ありませんでした。それくらい脳振盪の症状は様々で一筋縄ではいかないことが多いということです。

先日、アメリカンフットボールの最高峰NFLに関連したニュースが入りました(NBC football talk)「マス・ジェネラル・ブリガム」、「ボストン大」、「脳振盪CTE(慢性外傷性脳症)財団」の共同研究は、NFL選手は一般集団と比較して認知症やパーキンソン病などの神経変性疾患で亡くなる率が4倍高いと発表しました。
この研究は1960年から2019年までの期間にNFLでプレーした19,824人(うち1,994人が死亡)が対象。ポジション別では、スキル・ポジションの選手が攻守ラインの選手より、神経変性疾患で亡くなる率が2倍高いと分析。
また、実際に神経変性疾患で亡くなるNFL選手はこの共同研究のデータより高いという可能性も提示。認知症による誤嚥が肺炎を引き起こし死亡した際に、認知症には触れられることなく誤嚥性肺炎が死因として記録されることを例示しました。
また、共同調査では、60年の期間に神経変性疾患で亡くなる率には変化がないが、ルール変更や防具改良に効果が無いとは言えないという推論も提示、近年はカレッジ・フットボールでプレーする期間が長期化していること、選手はより大きくより速くなり衝撃が高まっていること、などを理由として提示されました。
共同調査は結論として、神経変性疾患の可能性を低減させるには、脳に対する衝撃の総量を抑制することが最善の方法と示唆し、本格的なコンタクトの開始年齢を遅らせること、練習におけるコンタクトを抑えることなどは、日本でも参考にすることができる項目も多く、今後の取り組みが必要と考えます。
なお、共同調査を行った研究者は、NFL選手は一般集団に比較して、癌、心血管疾患、自殺で死亡する率は低いと言及、一般集団に比較してより健康であることが理由として指摘された一方で、神経変性疾患への対応が改善されることは急務であると結論付けています。
このニュースをみて、ある映画を思い出しました。2015年に公開された「Concussion」です。ちょうど海外遠征の機内で視聴した記憶があります。その内容は、元NFL選手の遺体の脳を解剖したところ「CTE(慢性外傷性脳症)」が発見され、アメリカンフットボーㇽが原因ではないかとドクターが問題提起する映画です。今回のニュースもしかり、NFLでは「CTE(慢性外傷性脳症)」が深刻な問題になっています。

一方、NFLも全く対策をしていないわけではありません。最も危険とされていた「高速での衝突」を排除するため、2024年にキックオフルールを劇的に変更しました。これにより、リターン時の脳振盪発症率が43%減少したと報告されており、微調整を加えながら現在も継続されています。(日本では未実施のルールです)
また、練習中にヘルメットの上から装着するパッド型の保護具(ガーディアン・キャップ)について、試合での着用も認められるようになるなど、頭部への衝撃を物理的に和らげる取り組みが定着しています。
「アメリカンフットボールという競技そのものが持つリスク」は、現在も最新の科学によって証明され続けており、NFLは競技の魅力と選手の命をどう守るかという、終わりのない改革を迫られています。これは、日本でも同じことがいえると思います。アメリカほど競技人口が多いわけではありませんが、同様のリスクがあることは否めません。デリケートな問題でもあるのでなかなか難しいですね・・・